諦め切れなかった想いを叶えてくれたのはインターネットの世界

私は現在32歳、仕事は英会話の先生をしています。
そうなる前は専業主婦をしており、結婚前にやっていた仕事は語学とは全く関係のないものでした。

私は子どもの頃から映画好きでした。
6歳の頃、たまたま両親が私を映画館に連れていき、観たのがCG技術を駆使した恐竜映画でした。
両親はまさか私がそれを気に入るとは思わなかったようですが、当時の私の心はすっかりその映画につかまれてしまいました。
それ以降、むさぼるように映画を観まくった私ですが、なぜかアニメーションや国内の映画には興味がなく、実写の洋画ばかり選んで観ていました。
その理由は、ハリウッド作品等に出てくる俳優達の喋っている言語が格好良く感じていたからです。
「自分も、外国語を喋るこの人達のようになれば、この世界に近づくことが出来るのかもしれない」等という想いが私に芽生えたのは10歳くらいの時のことでした。
そして、将来はきっと英語を勉強しようと心に決めたのです。

中学校に入ると念願だった英語教育を受けられるようになりました。
私の入学した学校は中高一貫の私立女子学校で、少人数制で英語教育を行っているのが売りでした。
英語の授業が始まる時、意気揚々としていた私ですが、そこで周囲の子達との差に愕然とさせられます。
私以外の生徒達のほとんどが入学前に小学生の頃から英語を塾や英会話教室で学んでおり、初めの英語の授業で分からないことはほぼないようでした。
しかし、もちろんその日が初めて英語を習う日だった私には分からないことだらけ。
焦った私は英語を人一倍勉強し、皆について行けるよう、そしていつかは追い抜くことが出来るようになろうと頑張りました。
その甲斐あってか、中学、高校時代の私の英語の成績は学年トップで卒業することが出来ました。

大学に入ると、更に英語を極めようと英文科に進むことに決めました。
そこでは確かに高校までとは違った本格的な英語の勉強が始まり、レポート作成やディベートの準備等に忙しい日々を過ごしました。
本当に日々英語と触れ合い、英語漬けの学生生活をしているなかで、いつしか私の夢は英語に関係する仕事をすることになっていました。
しかし、当時自分は子どもが苦手な方だと何となく感じていた私は、英語を使う仕事のなかで、子どもに英語を教える仕事はしたくないと思っていました。

企業で英語を使う部署や職業を探していた私は、就職活動時にはそんな仕事の求人を中心に探し、たくさん面接を受けました。
ところが、英語好きだった私に足りなかったものが一つありました。
それは「資格」です。
新卒となる私の履歴書に書くことが出来た資格は運転免許だけで、英語をこんなにやっていたのに英語に関係する資格は一つも持っていませんでした。
これから取得するにも就活はとっくに始まってしまっており難しく、そのまま就活を続けました。
しかし、私と同じような職業を目指す周囲の学生のほとんどがTOEICや英検の資格を既に保有しており、私がその人達のなかに入っていても企業からは見向きもされませんでした。
結果、私の入社した企業は商社で、就いた仕事は英語や海外には全く関係の無い事務職でした。

そんな仕事をしながら5、6年が経った頃出会った男性と結婚し、仕事を退職し私は専業主婦となりました。
結婚してすぐに子どもを授かり、出産、子育てと、専業主婦なりに多忙な日々をおくっていた私ですが、そんな生活にどこか物足りなさというか、何かをやり残したような感じがしていました。
私は専業主婦でいられることは幸せだと思っていたのですが(それだけの経済力が夫にあり私が働かなくても良い状態なわけですから)、私のそんな想いは消えず、どこか悶々としていました。
その理由はもちろん私自身わかっていました。
英語を使う仕事をするという夢を叶えられないまま一生を終えてもいいのか、英語を勉強してきた成果を形にしないままで本当に良いのかという想いが続いていたのです。
私はその胸の内を夫に打ち明けました。すると夫は、「試しにTOEICを受験してみたら?合否も無いし、受かる落ちるが無いから軽い気持ちで受けられるし」と勧めてくれました。
夫の言葉を受け、私はTOEICの勉強をし始めました。
赤ちゃんの世話や家事をしつつ、隙間時間を狙ってコツコツと勉強すること半年、ついに人生初のTOEICを受験。
結果は850点という、予想外の高得点(私自身600点台かと思っていたので)でした。
勉強していたとはいえ家事の合間だったし、初受験だったのにもかかわらずこの得点で、本当に驚き喜びました。

英語の勉強の成果が資格という形になり、喜ばしいことでしたが、その先にある「英語の仕事に就く」というところまでの道のりは、赤ちゃんを抱えた私にとって簡単なものではなさそうでした。
派遣社員やパート、アルバイトをするにしても、可愛いさかりの我が子を保育園に入れてしまうのかと思うと、赤ちゃんと少しでも長く過ごしたい私にとっては苦しいことでした。
やはり就職は難しいかと諦めかけていた私ですが、ある日見かけたインターネットの広告に「オンライン英会話講師募集」という求人がありました。
ふとその求人を見てみると、オンラインなので自宅で仕事が出来、24時間体制なので講師が好きな時間に働くことが出来ることが売りのようで、しかも必要な資格等の条件もクリアしており、私にぴったりの仕事でした。
是非やってみたいと思い、夫に相談、了承してもらった私は早速その求人に応募。
オンラインで面談を受け、英語力テストも合格し、ついに英会話講師としての仕事がスタートしました。
とはいっても、乳児のいる私にとっては赤ちゃんの世話をしなくても良い時間帯でしか授業をすることができません。
一番手のかかる時期である赤ちゃんの世話がなくなる狙い目は、赤ちゃんが眠る夜の時間帯でした。
それでも夜まだ2、3回は起きて夜泣きしてしまうので油断は出来ません。
とりあえず、夜のうちの2時間くらいは授業ができるよう講師スケジュールを入れてみました。

新人講師の私でしたが、有難いことにすぐにレッスンの申し込みがあり、授業をすることになりました。
英語を教えた経験のない私に務まるか、生徒さんが私より英語力があったらどうしようかといった不安はありましたが、始まってみると生徒さんのレベルも私に合っていて、フリートークも弾み、なかなか上手く運びました。
ところが、授業の終わる5分前という時に、赤ちゃんが泣き出してしまったのです。
「授業中なのにどうしよう」と内心ドキドキしながら授業を続けていたのですが、なんと生徒さんが「赤ちゃん連れてきて良いですよ」と優しい言葉をかけてくれました。
生徒さんにお詫びをし、赤ちゃんを膝に乗せたまま授業を続行し、生徒さんの気遣いのおかげでようやく授業を終えることが出来ました。
このような赤ちゃんが泣いてしまうというアクシデントはありましたが、生徒さんからのクレームもありませんでした。

オンライン英会話講師という仕事は決して時給も高いものではありませんが、得意な英語を使って好きな時間に家も出ずに仕事をすることが出来る、私にとっては最高の仕事で、今もその仕事を続けています。
うちの子も少し大きくなり、以前のような夜泣きもなくなって仕事はさらにやり易くなりました。
夫も、私が好きなことを仕事にしていることを誇らしく思ってくれているようで、応援してくれています。
同じように言葉を教える仕事と言うことで、日本語教師にも少し興味が出てきています。
英語を活かすこともできるでしょうし、オンライン英会話があるならオンライン日本語?もあるのではないかと。
まだ英会話と両立はできないでしょうけど、いずれはやってみたいですね。

最近は趣味のアートを楽しむ余裕も出てきました。
アートは描くのも、鑑賞するのも好きです。
いつか宝くじが当たったりして資金ができれば、ギャラリーを開いたりしてみたい。
自分の作品だけでなく、将来の作家となる美大生の作品なんかも無償で展示してあげられるような場所。
私の住んでいる地域にはそういったギャラリーが一切ないので、あれば喜ぶ人はいると思うんです。
ちょっとした地域貢献になれば良いのですが、今の時点ではお金もないですし、妄想に過ぎません。
実現できるような日がきたら幸せですね。